旅行者データから見る「人気の宿泊タイプ」トレンド解析
〜旅行者が選ぶ“新しいホテル像”とは〜
ホテルや旅館を運営する側にとっても、旅行を計画する側にとっても、
「今、どんな宿泊タイプが選ばれているのか?」は最も気になるテーマです。
現在、宿泊市場は大きな転換期を迎えています。
コロナ禍を経て、旅の価値観は“観光重視”から“体験・滞在重視”へ。
ホテルを「寝るだけの場所」と捉える時代は終わり、
“過ごす時間”に意味を見出す旅が主流になりました。
この記事では、国内外の旅行者データ・予約動向をもとに、
人気宿泊タイプとその背景にある心理トレンドを徹底解析します。
データで見る宿泊タイプの変化(2020→2025)
観光庁・主要OTA(楽天トラベル、Booking.com、Airbnbなど)の統計によると、
過去5年間で旅行者の宿泊選択に以下の大きな変化が見られます。
| 年 | 人気宿泊タイプ上位3位 | 傾向 |
|---|---|---|
| 2020年 | ビジネスホテル/旅館/シティホテル | 移動・出張中心 |
| 2022年 | リゾートホテル/貸別荘/ビジネスホテル | コロナ後の“国内癒し旅”需要 |
| 2024年 | アパートメントホテル/高級旅館/ワーケーション対応ホテル | 滞在型・個別空間志向 |
| 2025年 | 長期滞在型ホテル/スモールラグジュアリー/体験型宿泊施設 | 生活+体験の融合へ |
この5年間で、“泊まる理由”が劇的に変わりました。
→ 移動のため → 滞在を楽しむため
→ 価格重視 → 体験価値重視
→ 標準化 → パーソナライズ化
つまり、ホテル選びの軸は「機能」から「意味」へと移行しています。
トレンド1:長期滞在型ホテルの急拡大(+42%)
まず注目すべきは、「長期滞在」需要の拡大です。
ワーケーション・リモートワーク・セミリタイア旅など、
“暮らすように旅をする”スタイルが定着。
2024年比で長期滞在プランの予約数は前年比+42%。
特に30〜40代の個人利用が増加しています。
人気ブランド例
- 東急ステイ(洗濯機・キッチン付き)
- MIMARU(ファミリー・長期滞在型)
- Henn na Hotel Residence(スマート家電対応)
選ばれる理由
- 在宅ワークが増え、どこでも仕事ができる
- 都会の喧騒を離れて「期間限定の別宅」として利用
- 家賃代わりにホテル暮らしをする“ノマド層”の台頭
今後、ホテル業界では「宿泊」ではなく“仮住まい市場”としての再定義が進むでしょう。
トレンド2:スモールラグジュアリーの台頭(+28%)
「贅沢=高級ホテル」ではなく、
“小規模で上質な時間”を提供する宿が人気を集めています。
スモールラグジュアリーとは
- 部屋数10〜30室の小規模高品質宿
- 建築やデザインにこだわり
- パーソナルな接客(顔を覚える、好みを把握する)
代表的事例
- 星野リゾート 界ブランド
- アマネム(三重・志摩)
- シークエンス(sequence)など都市型ブティックホテル
旅行者は今、“広さ”より“深さ”を求めています。
派手さよりも、静かな贅沢・自分専用の時間。
SNS時代のトレンドとは裏腹に、
「誰にも邪魔されない、整った空間」が上質の基準になっているのです。
トレンド3:体験型宿泊施設の人気上昇(+35%)
旅行者データを分析すると、
“泊まるだけではない宿”の検索数が急増しています。
キーワード例:
- 「グランピング」「サウナ付き宿」「アートホテル」「自然体験付き」
人気の背景
- モノ消費からコト消費へ
- SNSで「体験の共有」が価値化
- 滞在を“体験コンテンツ”として楽しむ文化の拡大
注目の宿泊タイプ
- グランピングリゾート(例:The Farm 千葉、星のや富士)
- サウナ宿(例:SORANO HOTEL、The Sauna 長野)
- アートホテル(例:BnA Alter Museum 京都)
特に20〜30代の旅行者にとって、
「宿泊=アクティビティの一部」であり、
ホテル選び=体験選びになっています。
トレンド4:ファミリー&マルチジェネレーション旅行の復活(+18%)
コロナ後の家族旅行は“団欒と回復”がテーマ。
家族三世代・親子連れの需要が回復し、
広めの客室・コネクティングルームを備えたホテルが再注目されています。
傾向
- 子ども料金無料や添い寝OKプランの増加
- ファミリースイート・2ベッドルームタイプが人気
- 祖父母+孫旅行(“3世代ステイ”)が急増
注目ホテル
- リゾナーレ八ヶ岳(アクティビティ重視)
- 東京ベイ東急ホテル(大人数部屋+送迎付き)
- MIMARU・OMOシリーズ(ファミリー向け設備)
ファミリー旅行のトレンドは、
「親の休息」よりも「家族全員が楽しめる滞在」へと変化しています。
トレンド5:サステナブル宿泊の関心上昇(+22%)
旅行者の約3人に1人が、宿泊先選びで環境配慮を意識しているという調査結果もあります(Booking.com 2025調査)。
具体的な選択基準
- アメニティのリフィル化
- 地産地消メニューの提供
- 再生可能エネルギー導入ホテル
注目ブランド
- 星野リゾートBEB
- SHIROIYA HOTEL(前橋)
- ANAインターコンチネンタル(サステナブル認証取得)
サステナビリティは“高級”や“流行”ではなく、
旅行者の新しいモラル基準になっています。
旅行者層別トレンド分析(年代・目的別)
| 旅行者層 | 人気宿泊タイプ | 特徴・傾向 |
|---|---|---|
| 20〜30代 | グランピング・体験型宿泊 | SNS重視・アクティブ消費 |
| 30〜40代 | 長期滞在型・スモールラグジュアリー | 自己投資・心の充足志向 |
| 50〜60代 | 旅館・温泉リゾート | 癒し・安心感・静けさ重視 |
| ファミリー層 | ファミリールーム・貸別荘 | 安全・広さ・コスパ優先 |
| ビジネス層 | ワーケーション対応ホテル | Wi-Fi・デスク環境・立地重視 |
旅行者データが示す「これからの宿泊ニーズ」
データを総合すると、
旅行者の宿泊動機は次の3軸で説明できます。
- 快適性(Comfort):清潔・静か・機能的
- 没入感(Experience):地域や文化との接点
- 持続性(Sustainability):環境と共存する意識
ホテルや旅館はこの3要素を組み合わせ、
“滞在価値をデザインする”時代に突入しています。
宿泊事業者が取るべき戦略の方向性
旅行者データの分析から見えてくる、宿泊事業者の対応ポイントは以下の通りです。
1. 「体験×滞在」をセットにした商品開発
宿泊単体ではなく、「地域体験」や「アクティビティ」をパッケージ化。
→ 例:「2泊3日・地元職人体験付きプラン」など。
2. 長期滞在プランの整備
週単位・月単位での料金設計や、
「掃除頻度減+割引プラン」など、サブスク型モデルへの対応。
3. パーソナライズド・ホスピタリティ
AI・データを活用し、過去宿泊履歴に基づく“おもてなしの再現”。
→「前回はコーヒー派」「低めの枕を希望」など。
4. サステナブル運営の可視化
旅行者は“努力”より“実績”を重視。
環境配慮の取り組みを「数値化」して発信することが信頼につながる。
まとめ:宿泊の未来は“個性×意味”の時代へ
2025年の宿泊トレンドを一言で表すなら――
「選ばれる理由が“価格”から“共感”に変わった」ということ。
旅行者は“どんな部屋に泊まるか”ではなく、
“その場所でどんな時間を過ごせるか”を重視しています。
- 一人でもくつろげる長期滞在
- 家族で過ごす時間を豊かにするファミリールーム
- 心を整えるスモールラグジュアリー
- 自然と共生するサステナブル宿
宿泊施設が提供すべきは「サービス」ではなく、
“感情に残る体験”。
これからのホテルは、「宿泊業」ではなく「体験デザイン業」へ。
それが、データが示す“宿泊の未来図”です。
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