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宿泊施設の稼働率を上げる方法|閑散期対策とレベニューマネジメント

宿泊施設の経営において、経営者が最も頭を悩ませるのが「稼働率」です。

客室が埋まらない日が続けば、固定費は変わらないのに売上が減り、利益がどんどん圧迫されていきます。

特に季節変動が大きい旅館業では、繁忙期と閑散期の売上格差が経営全体の安定性を左右する重要な要素になります。

「稼働率を上げるには、とにかく安く売ればいい」と考える経営者も多いですが、これは大きな誤解です。

実は、稼働率と利益の最大化は「単なる値下げ」では達成できません。

必要なのは

「戦略的な価格設定」

「ターゲット顧客の拡大」

「商品企画の工夫」

など、多面的なアプローチです。

この記事では、宿泊施設の稼働率を上げるための実践的な方法と、レベニューマネジメント(収益管理)という経営手法について、具体的に解説していきます。

「稼働率」と「利益」は必ずしも比例しない

まず、重要な認識が一つあります。それは「稼働率が高い=利益が大きい」ではないということです。

例えば、あなたの旅館で「1泊1万円で稼働率80%」という状況と「1泊6,000円で稼働率95%」という状況があったとします。

一見、後者の方が「稼働率が高くて優秀」に見えるかもしれません。しかし、売上を計算してみるとどうでしょう。

仮に30室の旅館で30日間営業する場合、月間で販売できる客室数は最大900室(30室×30日)です。

前者は「900室×80%×1万円=7,200万円」、後者は「900室×95%×6,000円=5,130万円」となり、後者の売上は前者より2,070万円も低くなります。

さらに、固定費や人件費を考えると、利益の差はさらに大きくなるでしょう。

つまり、「稼働率を上げるだけ」では経営改善にならず、重要なのは「稼働率と平均客室単価(ADR)のバランス」なのです。

この指標を「RevPAR(収益対客室数)」と呼びますが、宿泊業界では「稼働率×ADR」で計算される、この指標こそが経営成績を最も正確に示す指標とされています。

レベニューマネジメントとは何か

「稼働率と利益の最大化を同時に実現する」という経営課題の解決策が「レベニューマネジメント(Revenue Management)」です。これは、もともと航空業界で生まれた経営手法で、近年、宿泊業界でも急速に普及しています。

レベニューマネジメントの基本的な考え方

レベニューマネジメントとは「限られた客室という資源を、適切なタイミングで適切な価格で販売することにより、収益を最大化する体系的な経営手法」です。

具体的には、以下のような考え方に基づいています。

第一に「需要予測」です。

過去の予約データ、季節変動、競合状況、イベント情報などを分析し「今後、どの程度の需要が見込まれるのか」を予測します。

第二に「価格最適化」です。

需要予測の結果に基づいて「今この価格で販売すれば、最大の利益が生まれるのか」を計算し、動的に価格を変更します。

第三に「顧客セグメンテーション」です。

「どのような顧客層が、どのような価格やプランに反応するのか」を理解し、異なる顧客層に対して異なる商品を提供する戦略です。

第四に「在庫管理」です。

「いつまでに、何室売らなければならないのか」という目標を設定し、その目標に向かって施策を実行します。

これら四つの要素を統合的に実行することで「稼働率と利益の両立」が実現できるのです。

平均客室単価(ADR)と稼働率のバランス戦略

レベニューマネジメントを実践するにあたって、最初に理解すべきが「ADR(Average Daily Rate)」という指標です。

これは「1室あたりの平均宿泊料金」を意味します。

ADRを意識した価格設定

レベニューマネジメントでは、稼働率を単純に上げるのではなく「ADRを維持したまま稼働率を上げる」ことを目指します。

そのための手法が「セグメント別価格設定」です。

例えば、あなたの旅館が「1泊12,000円」という標準価格を持っていたとします。

繁忙期はこの標準価格で販売し、閑散期に稼働率が下がり始めたら、どうするか。

通常は「安く売ってでも埋めよう」という発想で「1泊8,000円」に値下げしてしまいます。

しかし、これは「全ての顧客が8,000円で購入するようになる」という罠を生みます。

本当は12,000円でも購入してくれた顧客も、8,000円で購入するようになってしまうのです。

これを「キャニバリゼーション」と呼び、レベニューマネジメント界では「最も避けるべき現象」とされています。

代わりに「異なるターゲット層に、異なる商品を提供する」というアプローチが有効です。例えば、以下のような戦略です。

「12,000円のプラン」:夕食付き、ラグジュアリーなアメニティ、早期チェックイン特典など、付加価値を充実させたプラン。このプランは繁忙期から閑散期まで、変わらずに提供します。

「8,000円の平日限定プラン」:素泊まり、または簡易朝食のみ、チェックイン時間を限定するなど、仕様を落としたプラン。このプランは平日の閑散期のみ提供します。

このように異なるプランを提供することで、顧客は「自分のニーズに合ったプランを選ぶ」ことになり、その結果として「全体の平均客室単価が下がらない」という効果が生まれるのです。

閑散期対策の具体的な方法

では、稼働率を上げるための具体的な施策は何でしょう。

施策1:ターゲット顧客の拡大

繁忙期のターゲットが「観光客」であれば、閑散期は「ビジネス利用者」「ワーケーション客」「リハビリや療養を目的とした滞在客」など、異なる層を狙います。

例えば、平日のビジネス需要が高い地域であれば「連泊割」「セミナーパッケージ」などを打ち出すことで、新しい顧客層を獲得できます。

施策2:ダイナミックプライシング(動的価格設定)

これは「需要と供給のバランスをリアルタイムで監視し、自動的に価格を調整する仕組み」です。

予約状況が良好であれば価格を上げ、予約が伸びていなければ段階的に価格を下げるという方法です。

例えば「今、30日後の予約状況が50%の埋まり具合であれば価格を15%下げる」といったルールを事前に設定しておくと、人手をかけずに自動的に価格が最適化されます。

施策3:季節限定プランの企画

「春の桜スポット巡りプラン」「冬の温泉&イルミネーションプラン」など、季節や時期に特化したプランを企画することで、その時期の需要を喚起します。

特にOTA(オンライン旅行代理店)は「季節プラン」を検索ユーザーに目立たせやすいため、こうした季節感のあるプランは効果的です。

施策4:付加価値の提供

「安く売る」のではなく「付加価値を加えて、同じか高い価格で売る」というアプローチです。例えば「地元の特産品をプレゼント」「地元の飲食店でのクーポン配布」「フィットネスやスパの無料利用」「特別体験プログラムへのアクセス」など、原価が低い付加価値を加えることで、顧客満足度を損なわない価格維持が可能になります。

施策5:リピーター向けの施策

新規顧客の獲得は、リピーター維持の5倍のコストがかかるとも言われています。

閑散期こそ、リピーター顧客に「感謝の気持ち」を込めた特別なオファーを提供し、長期的な関係構築を目指すべきです。

例えば「リピーター限定の優待価格」「次回利用時の割引券」「会員ランク制度」など、ロイヤルティプログラムの活用が有効です。

施策6:直販の強化

OTA経由の予約には「手数料」がかかりますが、自社ウェブサイトからの直販には手数料がかかりません。

閑散期に「直予約限定の割引」を提供することで、OTA手数料の負担を減らしながら稼働率を上げることができます。

例えば「当館ウェブサイトからの予約で、さらに500円割引」という施策は、顧客にとっても宿泊施設にとってもメリットがあります。

データ分析に基づいた施策の実行

レベニューマネジメントを実践する上で、もう一つ重要な要素が「データ分析」です。

確認すべきデータ

まず「過去3年分の予約データ」を分析します。

「何月が繁忙期で、何月が閑散期か」「どのような曜日に需要が高いか」「どのような顧客層が、どのシーズンに予約するのか」といったパターンを把握することが基本です。

次に「競合状況の把握」です。近隣の宿泊施設が「どのような価格で、どのような商品を提供しているのか」を継続的に監視することで、自社の位置づけが明確になります。

さらに「OTA上での表示順序と予約数の関係」を分析することも重要です。

「この価格帯に設定した時、OTA上での検索順位が上がり、予約が増えた」という相関関係を把握することで、最適な価格設定が見えてきます。

データを活用した改善サイクル

月に1度、少なくとも四半期に1度は「稼働率」「ADR」「RevPAR」を確認し、目標値との差分を分析します。

例えば「先月のRevPARが目標に対して10%低かった原因は、稼働率が低かったのか、ADRが低かったのか」を特定することで、次のアクションが決まります。

稼働率が問題なら「価格を下げるか、プロモーションを強化すべき」という判断になり、ADRが問題なら「付加価値を強化するか、顧客セグメンテーションを見直すべき」という判断になります。

中小旅館でもできるレベニューマネジメント

「レベニューマネジメントは大規模ホテルのためのもの」という誤解がありますが、これは全く違います。

むしろ、客室数10~30室の中小旅館こそ、レベニューマネジメントで劇的な改善が期待できます。

理由は「小規模だからこそ、1室の価値が高い」ということです。

30室の旅館で1室の稼働率が5%上がれば「30室×5%=1.5室分」の売上が増えます。

これは年間で「1.5室×365日×10,000円=約550万円」の売上増につながります。一方、300室のホテルで同じ5%の稼働率向上は「300室×5%=15室分」で「15室×365日×10,000円=約5,500万円」の売上増になりますが、相対的には「1室あたりの価値」は同じです。

つまり、小規模旅館は「1室1室を大切に管理する」ことで、大規模ホテルと同等かそれ以上のレベニューマネジメント効果が期待できるのです。

具体的な実施方法

中小旅館で実現可能な施策として、以下をお勧めします。

第一に「スプレッドシートでの簡易的なデータ管理」です。

複雑な分析ツールを導入しなくても、月ごと・曜日ごとの稼働率とADRを記録し、前年同月比で比較することで、十分な効果が得られます。

第二に「セグメント別プランの設計」です。「高級プラン」「標準プラン」「お手頃プラン」の3~4つのプランを設計し、OTA上で異なるターゲット層に見せることで、顧客のセルフセグメンテーションが実現できます。

第三に「季節変動を予測した早期予約プラン」です。「2ヶ月前までの予約で15%割引」といったプランを打ち出すことで、閑散期の需要を前倒しで獲得できます。

最後に:継続的な改善の重要性

稼働率を上げることは「一度の施策で完結する」のではなく「継続的な改善」が必要です。

市場環境は常に変わり、競合状況も刻々と変化しています。

重要なのは「月に1度は、最低限の分析を行う習慣」を身につけることです。

複雑なシステムは必要ありません。シンプルな指標(稼働率、ADR、RevPAR)を定期的に確認し「どこに問題があるのか」を冷徹に判断する。その判断に基づいて、次の施策を打つ。このサイクルを繰り返すことで、着実に経営成績は改善していくのです。

「宿泊施設の稼働率と利益を最大化する」というのは、難しい経営課題ですが「基本的な考え方を理解し、地道に改善する」ことで、確実に成果が出る分野でもあります。あなたの施設に最適な戦略を見つけ、実行していってください。

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