インバウンド対応で宿泊施設が強化すべきWEB施策
訪日外国人の数は急速に回復しており、2024年は過去最高を更新しました。
観光庁のデータでは、宿泊施設へのインバウンド需要も増加の一途をたどっており「インバウンド対応」は、もはや「取り組みが進んでいる施設」の競争優位ではなく「全ての宿泊施設が対応すべき基本戦略」へと変わりました。
しかし、多くのホテル・旅館の経営者が直面する課題は「インバウンド対応が必要なことは分かるが、具体的に何をすべきか分からない」ということです。
多言語対応、外国人決済、SNS活用、海外OTA戦略……複数の施策があり、どの優先度で実装すべきかが不明確なのです。
この記事では「インバウンド対応で宿泊施設が強化すべきWEB施策」を、戦略的な優先順位とともに、具体的にお伝えしていきます。
なぜ今、インバウンド対応が急務なのか
まず、インバウンド市場の現状を理解することから始めましょう。
訪日外国人数と宿泊需要の急速な回復
2023年の訪日外国人は約2,500万人、2024年は約3,300万人を超え、現在は「コロナ前の水準を上回る状況」が続いています。
地域別では、アジア地域(中国、韓国、台湾、東南アジア)からの来日が全体の約70%を占めています。
宿泊施設の稼働率向上と、客単価向上の両面でインバウンド需要は「無視できない市場」です。
特に「閑散期の稼働率向上」という課題に対して、インバウンド客は「平日や季節変動を気にしない」という特性があり、経営安定化に大きく貢献する顧客層です。
国内OTA依存から脱却する機会
従来、日本国内での宿泊施設の集客は「楽天トラベル」「じゃらん」といった国内OTA経由が主流でした。
しかし「インバウンド客の大多数は、国内OTAを利用しない」という特性があります。
代わりに、インバウンド客は「Booking.com」「Agoda」「Expedia」といった海外OTA、あるいは「Google検索」「SNS」を通じて宿泊施設を探します。
つまり、インバウンド対応は「新しい集客チャネルの確保」であり「国内OTA手数料の削減」につながる機会なのです。
「外国人対応できる施設」という差別化要因
現在、インバウンド客が宿泊施設を選択するときの重要な判断基準の一つが「対応言語の充実度」です。
多言語対応ができていない施設は「選択肢から外される」という状況が生まれています。
逆に言えば「しっかりした多言語対応」ができている施設は「インバウンド客層からの信頼」を獲得でき、集客面での大きな優位性を持つことができるのです。
多言語対応:最優先で実装すべき施策
インバウンド対応で最初に着手すべきは「多言語対応」です。これは「あると便利な機能」ではなく「なければ選ばれない機能」だからです。
対応すべき言語の優先順位
訪日外国人の地域別構成を考えると、以下の言語への対応が必須です。
英語:全ての外国人に対応可能な基本言語です。インバウンド対応ができていない施設でも「最低限の英語対応」は実装しておくべきです。
中国語(簡体字):中国からの来日客が「訪日外国人全体の約30%」を占めており、最優先で対応すべき言語です。
中国のGoogleやFacebookは使用できないため「中国国内で利用可能なプラットフォーム対応」も必要になります。
中国語(繁体字):台湾・香港からの来日客に対応するための言語です。簡体字と繁体字は全く異なる文字体系であり、別途対応が必要です。
韓国語:韓国からの来日客が「訪日外国人全体の約15~20%」を占めており、重要な言語です。
この4言語で訪日外国人の約80~85%をカバーできるため「最初はこの4言語」から始める企業が多いです。
その後、経営状況に応じて「タイ語」「ベトナム語」「インドネシア語」といった言語への対応を検討するという段階的アプローチが現実的です。
多言語対応の実装方法
自動翻訳ツールの活用:Google翻訳などの自動翻訳プラグインをウェブサイトに組み込むことで、最小限のコストで多言語対応を実現できます。ただし「自動翻訳の品質は不完全」という課題があります。
ネイティブ翻訳+ローカライゼーション:外国人スタッフやネイティブ翻訳者に翻訳を依頼し「言語的に正確」であるのはもちろん「その言語圏の顧客に響く表現」に調整する方法です。コストは高いですが「高い信頼感」を得られます。
ハイブリッド型:自動翻訳である程度の多言語対応を実現しながら「重要なページ(客室情報、料金、利用規約など)」だけはネイティブ翻訳を入れるという方法です。費用対効果のバランスが取れたアプローチです。
多言語対応の範囲
全てのページを多言語化する必要はありません。優先順位は以下の通りです。
最優先:トップページ、客室情報ページ、料金ページ、予約ページ、よくある質問、キャンセルポリシー
次優先:施設紹介、周辺観光情報、アメニティ情報、アクセス情報
後優先:ブログ記事、お知らせ
この優先順位で実装することで「予約に直結する情報」から、確実に多言語対応を進められます。
海外OTA戦略:インバウンド集客の主要チャネル
多言語対応と並行して「海外OTAへの登録と最適化」も緊急性が高い施策です。
Booking.com、Agoda、Expediaの特性
Booking.com:欧米客に強く、グローバルシェアが最大級です。手数料は12~15%程度。
ユーザーの信頼度が高く「Booking.comに掲載されているから安心」と判断する外国人客も多いです。
Agoda:アジア太平洋地域に特化したOTAで、東南アジア・韓国・台湾からの来日客を多く集めます。
手数料は12~15%程度。「価格比較に強い」という特性があり「安い施設」を探すユーザーが多くアクセスします。
Expedia:アメリカ系のグローバルOTAで、欧米客からの信頼度が高いです。手数料は15~18%程度と他のOTAより高めです。
インバウンド客層の特性に基づいた登録戦略
「自分たちのターゲット顧客はどの国から来るのか」を明確にすることで、登録すべきOTAが決まります。
欧米客をターゲットにしたい場合:Booking.comは必須。Expediaも検討対象。
アジア客(特に東南アジア)をターゲットにしたい場合:Agodaは必須。Booking.comも併行登録。
中国客をターゲットにしたい場合:Booking.comは「中国からアクセスできない」ため、中国国内の宿泊予約プラットフォーム(携程(Ctrip)、去哪儿(Qunar)など)への登録が必要。
海外OTA上での最適化戦略
単に登録するだけではなく「最適化」が重要です。
高品質な写真の掲載:外国人客は「写真」を重視します。
特に「客室の広さを感じる写真」「清潔感を感じる写真」「施設の雰囲気を伝える写真」の掲載が重要です。
詳細な説明文:「何ができるのか」を英語で明確に説明します。例えば「温泉」「大浴場」といった概念が外国人に理解されるよう「Hot spring bath」「Public bath」と説明することが大切です。
レビュー対応:海外OTA上のレビューに対して「丁寧に返信」することで「ホスピタリティのある施設」というイメージが形成されます。
カレンダーの常に最新状態:予約状況を常に最新に保つことで「稼働率の向上」と「顧客満足度」の両立が実現できます。
多言語チャットボット・カスタマーサポート
インバウンド客からの問い合わせ対応は「24時間対応」が求められることが多いため「AI多言語チャットボット」の導入が有効です。
チャットボットが対応すべき質問内容
「チェックイン・チェックアウトの時間は?」「Wi-Fi接続方法は?」「近くの駅までどのくらいの距離か?」「朝食は何時から?」といった「よくある質問」をAIチャットボットが自動回答することで「スタッフの業務負担」と「顧客の待機時間」の両方を削減できます。
ハイブリッド型サポートの構築
完全な自動対応は難しいため「チャットボットで対応できない質問は、スタッフに転送される」というハイブリッド型の構築が現実的です。さらに「翻訳機能付きのチャットシステム」を導入することで「外国人スタッフがいなくても対応可能」な体制が実現できます。
各言語対応の優先度
チャットボット対応言語も「多言語サイト」と同じ優先度(英語、簡体字中国語、繁体字中国語、韓国語)から開始することをお勧めします。
多言語SEO:海外検索からのオーガニック流入
日本国内ではGoogle検索が主流ですが、海外では状況が異なります。
各国の検索エンジン利用状況
欧米:Google検索が主流(シェア90%以上)
中国:Google検索は使用できず、Baidu(百度)が主流
韓国:Naver、Daum等が主流で、Google検索のシェアは比較的低い
東南アジア:国によってばらつきがありますが、Google検索が広く利用されている
このため「欧米客狙いなら、多言語Google SEO」「中国客狙いなら、Baidu最適化」という戦略分けが必要です。
多言語SEOの実装
英語サイトを作成し「English hotel in Japan」「Onsen ryokan near Tokyo」といった英語キーワードでの上位表示を目指す。
中国語サイトを作成する場合、Baiduの仕様に対応した技術的SEO対策を実装する。
Baiduは「中国国内のサーバーに置かれたサイト」を優遇する傾向があるため「中国サーバーの利用」も検討すべき。
各言語ページ間の「hreflang属性」を正しく設定することで「多言語SEO」の効果が最大化される。
Google ビジネスプロフィール(GBP)の多言語対応
Googleマップは「複数言語での検索」に対応しており「多言語でのGBP最適化」が重要です。
例えば「hotel tokyo」での検索と「东京 酒店」での検索で「同じ施設が検索結果に表示されるべき」という考え方です。
GBP上で「複数言語での説明文」「各言語での営業時間記載」を実装することで、多言語検索ユーザーへのリーチが実現できます。
SNS活用:インバウンド客の集客と信頼形成
インバウンド客の多くは「SNS(特にInstagram、Facebook、小红书(RED、中国))」を通じて宿泊施設を探します。
プラットフォーム別戦略
Instagram:ビジュアル重視のプラットフォーム。「客室の雰囲気」「温泉」「料理」といった「美しい瞬間」の写真・動画投稿が有効。特に若い旅行者がターゲットの場合は必須。
Facebook:特に欧米客向けのコミュニケーション。施設情報、イベント告知、クーポン配布などが有効。
小红书(RED):中国の若い女性向けSNS。「体験レビュー」「美しい写真」の投稿が中心で、中国客への影響力が非常に高い。
微博(Weibo):中国版Twitter。リアルタイム情報の発信に向いており「キャンペーン情報」「季節情報」の発信が有効。
WeChat:中国の主要コミュニケーションツール。企業アカウント(公众号)を作成することで「顧客とのダイレクト連携」が可能。
インバウンド客に響くコンテンツ
「日本文化体験」:温泉、懐石料理、茶道体験など「日本にしかない体験」を強調したコンテンツ。
「景色」:季節の風景、露天風呂からの眺望、周辺の観光スポットなど「ビジュアル」重視のコンテンツ。
「スタッフとの交流」:外国人スタッフの登場、スタッフ紹介、ホスピタリティの様子など「人間関係」を感じさせるコンテンツ。
「旅行ガイド」:「日本の温泉地の選び方」「春の京都観光ガイド」など「実用的な情報」も投稿することで、フォロワーの信頼を獲得できます。
キャッシュレス決済・多通貨対応
インバウンド客の「支払い方法」は、日本人とは大きく異なります。
対応すべき決済方法
クレジットカード決済:全ての外国人客が利用する基本的な決済方法。Visa、Mastercard、American Expressへの対応は必須。
QRコード決済(WeChat Pay、Alipay):中国からの来日客の大多数がこれらの決済方法を使用します。導入がないと「支払いができない状況」が発生してしまいます。
PayPal:欧米客が利用することもある国際的な決済方法。
銀聯(UnionPay)カード:中国発行のクレジットカード。中国客が日本で使用することが多い。
多通貨対応
予約ページで「複数通貨での料金表示」ができると、外国人客の「購買判断」が容易になります。
例えば「¥12,000」と表示されるより「$100」と表示される方が、米国客にとって分かりやすいということです。
ただし「複数通貨での決済」までを求める施設は少数派であり「表示は多通貨、決済は円またはクレジットカード基軸」というハイブリッドアプローチが現実的です。
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