連泊のお客様は、施設にとってありがたい存在です。
清掃の手間が減り、チェックイン対応も1回で済み、稼働も安定します。
それなのに、連泊プランを作ったあとにこうなる施設が少なくありません。
「連泊は増えたが、売上は思ったほど伸びていない」
「単価が下がっただけで、利益が増えた実感がない」
原因ははっきりしています。連泊で減るコストを計算しないまま、割引率だけを決めていることです。
本記事では、連泊で実際にいくらコストが減るのかを洗い出し、そこから割引の上限を決める方法を解説します。清掃の設計と、価格の付け方の3つの選択肢まで扱います。
連泊プランでよくある2つの失敗
「なんとなく10%引き」で作っている
連泊プランの割引率は、他施設を見て決められていることが多いものです。
しかし、連泊で減るコストは施設によって違います。中日の清掃を止められる施設と、毎日入る施設とでは、割引できる余地がまったく違います。
他施設の割引率は、その施設のコスト構造から出た数字です。自施設に当てはまる保証はありません。
清掃を止めているのに、価格に反映していない
逆のパターンもあります。中日の清掃を省略しているのに、割引をしていない施設です。
この場合、施設側はコストが減って得をしていますが、宿泊者から見ると「サービスが減ったのに値段は同じ」に映ります。
口コミで指摘されやすいのはこの形です。減らしたサービスと、下げた価格が対応していないと、不満につながります。
連泊で実際に減るコストを洗い出す
まず、1泊あたりに発生している費用を分解します。連泊で減るものと、減らないものを分けるためです。
減るもの:客室清掃
最も大きいのがここです。中日の清掃を「タオル交換とゴミ回収のみ」にすれば、通常清掃の2〜3割程度の作業量で済みます。
外注している場合は、連泊中日の単価を別に設定できるか委託先に確認してください。同じ単価で請求されているなら、そこが最初の改善点です。
減るもの:リネンとアメニティ
シーツの交換を連泊中は行わない運用にすれば、洗濯費が減ります。歯ブラシなどの使い捨てアメニティも、初日のみの提供にできます。
ただし、これは事前に明記しておく必要があります。書かずに省略すると、単なるサービス低下と受け取られます。
減らないもの:OTA手数料
見落とされやすいのがここです。OTA手数料は売上に対する率で決まるため、泊数が増えれば手数料も比例して増えます。
1室あたりの手間は減っても、手数料は減りません。ここを「連泊だから安くできる」と勘定に入れてしまうと、計算が合わなくなります。
いくら割引できるかを計算する
実際に数字で見ていきます。以下は説明のために条件を置いた試算です。実際の金額はご自身のものに置き換えてください。
| 項目 | 1泊目 | 連泊の中日 |
|---|---|---|
| 客室清掃 | 2,000円 | 500円(タオル交換・ゴミ回収のみ) |
| アメニティ・消耗品 | 300円 | 300円 |
| OTA手数料(売上の10%) | 1,200円 | 1,200円 |
ADRは12,000円とします。この条件で、泊数ごとに手元に残る金額を計算します。
| 売上 | 変動費 | 手元に残る額 | 1泊あたり | |
|---|---|---|---|---|
| 1泊のお客様 | 12,000円 | 3,500円 | 8,500円 | 8,500円 |
| 2泊のお客様 | 24,000円 | 5,500円 | 18,500円 | 9,250円 |
| 3泊のお客様 | 36,000円 | 7,500円 | 28,500円 | 9,500円 |
1泊のお客様を2回受け入れると、手元に残るのは17,000円です。同じ部屋に2泊してもらうと18,500円。差額の1,500円が、連泊によって生まれた余裕です。
3泊なら、1泊×3回の25,500円に対して28,500円。差は3,000円になります。
つまりこの施設の場合、2泊プランで割引できる上限は1,500円、3泊なら3,000円です。これを超えると、1泊で売るより不利になります。
上限いっぱいまで割引してはいけない
上限まで割り引くと、連泊で得た余裕をすべて宿泊者に渡すことになります。それでは施設側に利益が残りません。
目安として、上限の半分から3分の2程度に設定します。この例なら2泊で800〜1,000円、率にすると3〜4%です。
「10%引き」が相場だと思っていた方には、意外に小さく感じるかもしれません。しかし計算上、10%(2,400円)の割引は上限の1,500円を大きく超えており、連泊が増えるほど利益が減ります。
価格の付け方は3通り
| 方法 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ① 総額から一律割引 | 2泊以上で総額から◯円引き | 分かりやすさを優先したいとき |
| ② 2泊目以降を割引 | 1泊目は通常料金、2泊目から安くする | コスト構造に最も忠実。長期になるほど有利 |
| ③ 連泊専用プラン | 清掃頻度を明記した別プランを作る | サービス内容の違いを伝えたいとき |
迷ったら②です。実際のコスト構造と一致しているため、泊数が延びても採算が崩れません。
③は、中日の清掃を省略する場合に選んでください。プラン名と説明文で条件を明記できるため、認識の食い違いを防げます。
清掃の設計と、伝え方
連泊プランの成否は、清掃の設計で決まります。次の項目を決めて、プラン説明文に書いてください。
- 中日の清掃はどうするか 全清掃/簡易清掃/なし のいずれか
- タオルの交換 毎日交換するか、希望時のみか
- シーツの交換 何泊目に交換するか(3泊目に1回、など)
- アメニティの補充 初日のみか、毎日か
- ゴミの回収 毎日行うか、扉の外に出してもらうか
- 希望すれば清掃を入れられるか その場合の追加料金の有無
最後の項目を用意しておくと、満足度が大きく変わります。「清掃なし」と決めきるのではなく、希望すれば入れられるという形にすれば、宿泊者は自分で選べます。
選択できる状態と、選択肢がない状態とでは、同じ内容でも受け止め方が変わります。
書き方の例
プラン説明文には、削るのではなく「こうしています」と書きます。
「連泊中の中日は、お客様のお荷物やお持ち物に触れないよう、タオルの交換とゴミの回収のみとしております。清掃をご希望の場合は、前日までにフロントへお申し付けください。」
同じ運用でも、「清掃はありません」と書くのとでは印象が違います。理由と選択肢を添えるだけで、不満は大きく減ります。
連泊を「増やす」ための設定
プランを作っただけでは、連泊は増えません。在庫の出し方でも誘導できます。
最低宿泊日数を設定する
多くのOTAには、特定の日に「2泊以上でないと予約できない」という設定があります。連休の中日や、前後が埋まりにくい日に有効です。
たとえば3連休で、初日と最終日は埋まるが中日だけ空く施設の場合、中日を1泊で売ってしまうと前後に半端な空室が残ります。
ここに2泊以上の条件を付けると、2泊まとめて売れるか、まったく売れないかのどちらかになります。前者になれば、清掃1回分のコストで2泊分の売上が立ちます。
ただし、これは需要が読める日にだけ使う設定です。閑散期に付けると、1泊なら入ったはずの予約まで逃します。
直前になったら条件を外す
最低宿泊日数は、掛けっぱなしにしないでください。
宿泊日の1週間前になっても埋まっていなければ、その日の需要は想定より弱かったということです。条件を外して1泊でも受け入れるほうが、空室のまま当日を迎えるより確実に良い結果になります。
「いつ外すか」を先に決めておくと、迷いません。7日前、あるいは3日前といった基準を運用ルールにしてください。
平日に寄せる
連泊プランは、金土だけを狙うと効果が薄くなります。もともと埋まる曜日だからです。
「日曜チェックインで2泊」「木曜チェックインで3泊」のように、埋まりにくい曜日を含む形で設計すると、空室を埋める道具として機能します。
効果はこの2つで確かめる
連泊プランを始めたら、翌月から次の2つを毎月記録してください。
| 指標 | 出し方 | 見方 |
|---|---|---|
| 平均滞在日数 | 延べ宿泊数 ÷ 予約件数 | 上がっていれば、連泊は増えている |
| 清掃費の実額 | 月の清掃費請求額 ÷ 延べ宿泊数 | 下がっていれば、コスト削減が効いている |
2つ目を必ず入れてください。平均滞在日数だけが伸びて清掃費が下がっていないなら、中日の清掃を止めた効果が費用に反映されていないということです。
その場合、原因は外注先との契約にあります。連泊中日も通常清掃と同じ単価で請求されていないか、請求書を確認してください。
ここが変わらないままだと、割引だけを実施して利益を減らしている状態になります。清掃の契約を変えることが、連泊プランの前提条件です。
連泊が向く施設・向かない施設
すべての施設で連泊プランが有効なわけではありません。判断の目安です。
- 向いている 平日に空きがある/清掃を外注していて中日単価を下げられる/観光以外の需要(出張・研修・工事)がある
- 向いていない 週末しか埋まらない/1泊単価が高く連泊需要が薄い/中日も全清掃が必要な運用
特に注意したいのが、繁忙期の連泊です。1泊で売れば満室になる時期に連泊割引を出すと、割引したぶんだけ損をします。
連泊プランは、空いている期間を埋めるための道具です。埋まる時期には出さない、という運用にしてください。
閑散期の平日をどう埋めるかという観点では、連泊はワーケーションや長期滞在の需要とも相性があります。滞在の魅せ方は連泊を促す「滞在型プラン」の魅せ方もあわせてご覧ください。
まとめ
連泊プランの割引率は、相場ではなく自施設のコスト構造から決めます。中日の清掃・リネン・アメニティで減る金額が、割引できる上限です。
OTA手数料は泊数に比例して増えるため、減るコストには含めません。ここを間違えると、割引しすぎになります。
まずは中日の清掃にいくらかかっているかを確認してください。外注先への1回あたりの単価が分かれば、その日のうちに割引の上限が出せます。
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